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父の苦労も、仕事に対する情熱も、どちらも見て育ちましたから、仕事を継ぐにあたって少しは悩みました。
同じ年頃の兄弟弟子が四人いましたが、しつけはきびしかった。実の子だからという差は全然なかったです。
「名工、名人を夢見るな。あわてずに仕事ができる職人になれ」と言った父の言葉を、いつもかみしめています。
先日、父のマネをしてこけしの底に足を描いたら、『まだ早い』と人に言われました。改めて父の大きさを思い知りましたね。
去年から「津軽こけし工人会」の会長になりました。若輩者の私にこの大役が務まっているのは、こけしに対する熱意という点で、工人全員の気持ちが一致しているからでしょう。一人でも多くの人にこけしの良さを知ってもらうことが、私の役目だと思っています。
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津軽こけし工人会編 「やさしさの匠」より(平成6年刊行) |
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